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七十二候 第四十二
禾実る(こくもつみのる)
9月2日~7日頃
田に稲が実り、穂をたらすころ。

夏の日ざしをたっぷりあびて栄養をたくわえた早稲が、重たそうに頭を垂れるようになりました。
稲穂がさわさわとざわめくと、波打つ金色の海のようです。
収穫はもうすぐ。新米が楽しみです。

【由来】
中国の大衍暦(だいえんれき)によると、禾乃登(かすなわちのぼる) 
「禾」とは稲などの先に生えている毛のことで、麦、粟、稗などの穀物の総称でもあります。
「登」は穂を立てて実ること。

稲がたくさんの穂をつけ稲田一面が金色に輝く頃。
稲作文化は縄文後期に伝わったとさる。
稲の原産はインドのデルタ地帯とも、中国雲南地方ともいわれている。
鎌倉時代には津軽まで広がっていた。

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 俳句
うねりゐて月の稲穂のかぎりなし
 新田祐久
ところどころ家かたまりぬ稲の中
 子規

稲の穂が寝れば万民高まくら
 江戸川柳

粟(あわ)
イネ科 一年草
五穀の一つ。
9月頃、茎の頂に大きな穂を付け、無数の小花が密生。
後に黄色を帯びた実を結ぶ。
葉はトウモロコシに似ている。
現在は、お餅やお菓子用に栽培され、小鳥の餌にもなる。
・よき家や雀よろこぶ背戸の粟
  芭蕉
・粟畑の奥まであかき入日かな
  空芽
・山畑の粟の稔りの早きかな
  高浜虚子
・粟の穂や越中八尾まで十里
  長田等
・よく揃ふ粟の垂穂のここは加賀
  赤尾冨美子


稗(ひえ)
イネ科の一年草。
かつては救荒作物として栽培された。
9月頃実を結ぶ。
小さな実は小鳥の餌にしたり、藁は青刈りして肥料としたりする。
・ぬきんでて稲よりも濃く稗熟れぬ
  篠原梵
・日照雨来や狭田は稗を踊らしめ
  石田波郷
・稗を抜くぶっきらぼうな顔が来て
  茨木和生

黍(きび)
イネ科 一年草
五穀の一つ。
茎の高さ1.3m。
葉は粟・稗に比べ幅が広い。
粟よりも大粒。
栄養価が高い。
現在はお菓子の材料として栽培される。
きび団子。
・黍の葉に黍の風だけかようらし
  中川宋淵
・ずぶぬれの黍ずぶぬれの身に負へる
  西本一都
・黍高く熟れ一片の雲遠し
  清崎敏郎
・そこばかり風の休める黍畑
  清水基吉
・黍刈て槍の朝の土間に居る
  正岡子規
・噴煙の低くながるる黍を刈る
  稲島帚木
・まっすぐに山より降って黍の雨
  森澄雄
・黍の闇もとより深し黒川能
  向笠和子
・黍の粥山の日向の匂ひして
  飯島晴子